境界を越えた分離壁の建設

境界を越えた分離壁の建設

この一方でイスラエルはパレスチナ人居住区とを分断する壁を一方的に築いている。イスラエルは「Wall(壁)」ではなく「Fence(フェンス、柵)」であると主張し、「反テロフェンス」と呼んでいる。壁は、イスラエル領土だけで無く、イスラエル領域外の入植地を囲む形で建設が進められている。第1次中東戦争の停戦ラインでパレスチナ側とされた領域も壁の内部に取り込まれており、事実上の領土拡大を進めている。2004年7月9日、国際司法裁判所は、イスラエルによる占領下にあるパレスチナにおける壁の建設が国際法に違反するという勧告的意見を下した。イスラエル側は現在も壁の建設を続行している(エルサレム周辺地図(英語) 青地がイスラエル入植地、灰地がパレスチナ人居留区、黒実線が壁、灰実線が計画中の壁。全体図は外部リンクからパレスチナ赤新月社による地図参照)

また、単に壁を作るだけではなく、道路の通行規制も行っている。パレスチナ自治区であるべき地域に、イスラエル人専用道路(パレスチナ人立ち入り禁止)や、パレスチナ人の通行制限されている道路が多数存在している(地図:ヨルダン渓谷沿い入植地群)。さらに、イスラエルは要所に検問所を設け、気まぐれに通行規制を行い、パレスチナの多数の病人や怪我人を死に追いやっている。また、パレスチナより先進医療の整備されたイスラエルでの治療を求める患者に対し、イスラエルの密告者(スパイ)になるよう要求し、断った者に治療拒否する事件も起きている(Israel accused of forcing patients to be informers(「イスラエル、患者に密告者であることを強制し非難される」、英語))。このようにしてイスラエルは、パレスチナ人のあらゆる交通・物流を制限し、居住区に押し込めている。

<アラファト後>
アラファト議長(正式には大統領であるが、日本などはまだ国家として承認していないためこのように呼んだ。日本政府の正式な呼称は「自治政府長官」であったが、2006年に「自治政府大統領」に改められた)の死後、2005年1月の自治政府議長選ではマフムード・アッバースが当選した。しかし、選挙中に武装部門のファタハに担ぎ上げられたり、その一方で武装闘争は誤りであったと述べるなどという言動もあったので過激派への対策がどのようになるかは不透明である。

<ガザ撤退と西岸の入植地堅持>
2005年4月には、アメリカの大統領のブッシュがイスラエル首相のアリエル・シャロンとの会談で、2005年8月を目処にイスラエル側がガザ地区の入植地からの撤退を予定する一方でヨルダン川西岸地区最大のマーレ・アドミム地区への入植地拡大を計画していることに対し、「中東和平の行程表(ロードマップ)に反する。」として、強い懸念を示した。シャロンと「約束の地」への思い入れが強い宗教右派の間には対立が存在し、更には入植者が強い抵抗を示す中で、治安部隊によるガザからの退去作業が8月17日より開始され、ガザの入植地は解体された。しかし、ヨルダン川西岸地区の入植地は明け渡さず、逆に新たな入植地の拡大を進めている。

<選挙でのハマースの勝利>
2006年1月には、パレスチナ総選挙でハマースが第一党になり、3月29日、アッバース議長の元でハマースのハニーヤ内閣が成立した。ハマースをテロ組織と指定するEU、アメリカ、日本などは援助を差し止め、ファタハとハマースの武装衝突が激化するなど、パレスチナの混迷が続いている。