パレスチナ内紛と続くイスラエルの侵攻

パレスチナ内紛と続くイスラエルの侵攻

パレスチナ内部でも、米欧・イスラエルの支持を受けるファタハと、ハマースの内部抗争が続いている。2006年にハマースは選挙での多数を根拠に単独内閣を組んだものの、国際社会は認知しようとしなかった。ファタハとハマースの間で連立政権の交渉が進められたが、両者の抗争で2006年中だけで28人の死者を出している。

2007年には、両者の抗争で50人に及ぶ死者を出した。5月16日には、ハニーヤ首相の自宅に何者かの発砲事件があり、5月17日には、ハマースによるアッバース議長の暗殺計画が発覚。5度に及ぶ停戦合意がなされているが、合意の直後に抗争が再開される状況が続いている。6月11日からの抗争は、ハマースがガザ地区を武力占拠したことで、本格的な内戦に突入。アッバース大統領は非常事態宣言を出し、内閣の解散を宣言。イスラエルや米国は、ハマースを排除したファイヤド政権を正式な交渉相手と認めた。6月20日、アッバース大統領は「人殺しのテロリストたちとは対話はしない」と、ハマースを相手にしないことを表明した。

平行して、イスラエルによる攻撃も続いている。4月24日、ハマースはイスラエルによるパレスチナ自治区ヨルダン川西岸とガザ地区攻撃への報復として、ガザ地区からイスラエルへロケット弾の攻撃を行った。ハマース側はイスラエルの攻撃に対する応戦であり、停戦そのものを破棄するつもりはないと主張したが、イスラエルはガザ地区への空襲を繰り返し行い、さらに地上部隊の再侵攻を主張する声も強くなった。極右政党「わが家イスラエル」党首のリーバーマン副首相は「イスラエル軍がハマース壊滅のための地上作戦に踏み切らなければ、連立政権から離れる」と主張した。

5月20日には、ハマースのハリル・アルハヤ立法評議員(国会議員)宅が空襲を受け、アルハヤはハマースとファタハの停戦協議のため不在で難を逃れたが、8人が死亡した。イスラエル側はアルハヤを標的にしたものではなく、付近にいた武装集団を狙ったものと主張した。5月21日、パレスチナ側の攻撃でイスラエル人1人が死亡すると、イスラエルのリブニ外相は共同記者会見で「停戦は幻想で、ロケット弾はハマスが平穏に乗じて武器の密輸を行った結果だ。われわれはハマースと戦い続ける」と述べた。また、同国のアビ・デヒテル警察相は、ハマースの事実上の最高指導者であるハーリド・マシャアルについて、「彼の存在は正当な標的である以上だ。困難な使命ではあるが機会さえあればいつでも、彼を我々の前から消すことだろう」と暗殺を公言し、さらにハニーヤ首相の暗殺についても「(イスラエルに対する)攻撃命令を出している者の中にハニーヤが連なっているならば、彼も正当な標的となる」と実行に含みを持たせた(「警察相、ハマス最高指導者の殺害を予告 - イスラエル * 2007年05月21日 20:10 発信地:イスラエル」)。

さらに、5月31日、ユダヤ教スファルディーの前首席ラビであるモルデハイ・エリヤフは、オルメルト首相に「ユダヤ人の戦争倫理によると、個人の不道徳な行為について、市全体が集団的な責任を負う。ガザではカッサムロケットの発射を止めないから、すべての人口に責任がある」と主張する手紙を出し、シナゴーグに内容を配布した。パレスチナ『エレクトロニック・インティファーダ』紙のアリ・アブニマーは、「イスラエルでこの類のパレスチナ人に対する大量虐殺をそそのかす憎悪が語られるのは珍しいことではない。では、ムスリムやパレスチナの指導者がこのようなことを言ったらどうなるか。イランのアフマディネジャド大統領が伝えられたところでは、イスラエルを取り除くことを述べたときに、国際社会がどう激しく抗議をしたかを私たちは知っている。アフマディネジャドを非難して、ご機嫌取りをしていたすべてのEU官僚は、このイスラエルの前首席ラビに対して、同じような強く、公的な立場を取るのだろうか?」と批判した。

6月28日、イスラエルはガザに地上部隊を侵攻させ、軍民合わせて少なくとも12人を殺害。さらに、15歳から50歳の男性に家から出るように命じ、町の広場に集めさせた。

11月27日、米国の仲介で開かれた中東和平国際会議において、ブッシュ米大統領、オルメルト・イスラエル首相、アッバース・パレスチナ自治政府議長は和平交渉再開を確認した。しかし、ブッシュはイスラエルを「ユダヤ人国家」と定義づけ、イスラエル領及びイスラエル占領下の地への帰還を望むパレスチナ人や、イスラエルの非ユダヤ人住民の神経を逆なでした。イスラエルは、自国をユダヤ人のみの単一民族国家と定義づけることを望んでおり、ブッシュはその意を汲んだといわれている。また、イスラエルは交渉再開を表明する一方、連日ガザ地区の攻撃や空襲を行い、11月30日には、ガザ再侵攻の準備が整ったことを発表した。

2008年1月、ブッシュ米大統領はイスラエル・パレスチナを歴訪。1月9日にはイスラエルでオルメルト首相と会談し、1月10日には初めてパレスチナを訪問し、アッバース議長と会談した。ブッシュ大統領は、イスラエルの入植地について「1967年に始まった占領を終結させる必要がある」と述べ、またパレスチナ自治区を入植地が分断している現状について「スイスチーズ(穴あきチーズ)ではうまくいかない」と批判した。一方、パレスチナに対しては「テロとの戦い」の継続と、ハマースからのガザ地区奪還を要求した。
しかし、イスラエルのガザ地区攻撃については「パレスチナ領域がテロ組織の天国になってはならない」と理解を示し、イスラエル領への帰還を望むパレスチナ難民についてはこれを認めず、保証金で解決する考えを示した。入植地についても、具体的にまとまったのはイスラエル政府が違法とする入植施設の撤去を約束したことだけで、既存の入植地・検問所については追認する考えを示すなど、イスラエルに有利な現状を追認するに留まった。『東京新聞』『中日新聞』は、これを「イスラエルの『独り勝ち』」と評した。パレスチナではブッシュに抗議するデモが行われ、イスラエルでの世論調査では、和平の進展に懐疑的な意見が多数を占めた。

並行して、ハマース側はイスラエルをロケット弾で攻撃し、イスラエルは報復にガザ地区を攻撃。1月15日にはガザ市街に侵攻し、民間人5人を含む17人を殺害した。ハマース側は、イスラエルの集団農場(キブツ)で作業していたエクアドル人ボランティア1人を殺害した。1月18日には、イスラエルの空襲でガザにある内務省ビルが破壊された。1月の間に、パレスチナ側からは少なくとも96人の犠牲者が出た。イスラエルのバラク国防相はロケット弾攻撃の報復にガザ地区の完全封鎖を指示し、国連の援助車両も閉め出した。燃料の供給が止まったため、ガザ地区唯一の発電所は操業不能となり、ガザの電気の1/3(イスラエル側の主張によれば、1/4)が供給できなくなった。また、食料などの生活必需品も、イスラエルの兵糧攻めにより深刻な状況となっているという。17日には、国連の潘基文事務総長が「パレスチナ人による襲撃の即時停止、ならびイスラエル軍の最大限の自制を求め」る声明を出したが、イスラエルとハマースはこれを無視した。